2020年12月20日

LINE PayやAlipay、べんりなスマホ決済サービスの先にあるものとは

最近はコンビニの支払いなんかもスマホで「ピッ」と支払えるようになりました。社会がべんりになることはいいことですよね。

「PayPay(ペイペイ)」とか「LINE Pay(ラインペイ)」とか『〜Pay(ペイ)』というサービスがたくさん生まれてきています。時代はキャッシュレス(現金を持ち歩かない)へと流れていっています。ではさらにこの先はどうなっていくんでしょうか。

日本よりもずっとキャッシュレス社会になっている中国で、スマホ決済サービスについておもしろい現象がおこっていたので紹介いたします。

 

 

『〜Pay(ペイ)』の元ネタ、『Ali Pay(アリペイ)』

『〜Pay(ペイ)』の元ネタは中国の『アリババ』という会社の決済サービス『Ali Pay(アリペイ)』です。このアリペイのアプリを開くとまっさきに3ケタの数字が目につきます。この数字が今回の記事の主役『芝麻信用(ジーマしんよう)』です。

芝麻とはゴマのこと、芝麻信用を英語にするとセサミ・クレジットになります。

なんでゴマなのかというと、『アリババと40人の盗賊』というおとぎ話で盗賊のねじろの扉を開ける魔法のことば『ひらけ、ゴマ!!』からきているそうです。そして芝麻信用は、時代の扉を開けてしまいました。

 

 

『芝麻信用(ジーマしんよう)』ってつまりはなんなの?

芝麻信用とはあなたがどれだけ信用できるかを表したポイントです。

日本でもたとえば、借りたお金を返さなかったりお店のモノを壊したりすると、お金を借りられなくなったり、近所のほかのお店に入れなくなったりしますよね。

『ブラックリストにのった』状態になるわけです。

 

ブラックリストとはいうけれど、じつは本当にそんなリストがあるわけではありません。

じつはむかしから銀行や金融機関のあいだでは貸したお金を返してもらえないと困るので、『その人がどれだけ信用できるのか情報』を共有してきた歴史があります。『ブラックリストにのった』状態とは、この信用ポイントが低くなっちゃった状態のことをあらわしています。

ところでこれまで中国では、この『その人がどれだけ信用できるのか情報』がありませんでした。人が多すぎることや、国がとにかく広いので、どこかで借金を踏み倒しても、どこか遠くに逃げられたら追跡できないからです。

信用情報が存在しなかったので、むかしの中国ではお金を貸すのも借りるのも大変でした。

しかし中国も経済発展してIT技術も高度になって、ひとりひとりに信用情報をつけることが技術的に可能になりました。

 

そこで中国社会の信用情報作りにまっさきに手をあげたのが『アリババ』という会社です。このアリババは、アメリカのアマゾンよりも大きなネット通販の会社です。さらにクレジットカード(銀行)や、ツイッターやフェイスブックのようなSNS 、LINE みたいなコミュニケーション・ツールもてがけていました。

そのアリババはひらめきました。

 

「ほかの国の、銀行のお金の履歴(どれだけ借りて、どれだけちゃんと返したか)をチェックするだけの信用情報じゃなくて、通販の購入履歴やSNSアカウント の評価も取り入れて信用情報を決めればもっと正確に判定できるのでは?」

 

そしてできたのが『芝麻信用(ジーマしんよう)』です。

世界初、通販の履歴やSNS の発言をチェックする信用情報データベースが生まれました。そしてこのサービスはあんまり流行りすぎて中国政府がストップをかけるほどの社会現象になったのです。しかしなぜ流行ったのでしょうか?

 

通販とSNS を組み合わせてどうなったか

先ほど触れましたように、他の国の信用情報とは大抵銀行での貸し借りの記録から信用情報を格付けしています。

しかし芝麻信用はネット通販の購入履歴と、その人のSNS での発言や評価も信用情報を算出するのに利用しました。

つまりはこういうことです。

 

 

ネット通販で定期的におむつを買う人はスコアが上がる

たとえばネット通販で定期的におむつを買う人はスコアが上がりやすかったりしました。

なぜかというと、おむつを買う人の家にはちいさな子どもがいる可能性が高く、親は責任感が高い傾向がある(踏み倒すために子どもをつれて逃げたりする可能性が低い)のでスコアが上がります。

 

 

SNS で「ゲームやりすぎた」とか書くと評価が下がる

たとえばSNS で自分のアカウントで「やべー、きのうゲーム7時間もやりすぎた」と書き込むと評価が下がりました。ゲームをやりたい欲望に負けるような人はひょっとしてお金も返せない怠け者かもしれないからです。

そしてSNS に実名で登録したり住所など個人情報で登録するとすこしスコアが上がるようにもしました。

個人情報が多い方がより精度の高い情報になるからです。

匿名のフォロワーがいると自分のスコアが下がるかもしれないので、みんな自分だけでなく、自分の友達やフォロワーにも個人情報を登録するようにうながしました。

こういうふうにこまかく100も1000もたくさんの条件で判定してスコアをつけていきました。

ひょっとしてネット決済が苦手な人に代わっておむつを買っているだけの独身の人かもしれませんし、10年ぶりにゲームしたから熱中しただけで、普段はゲームしない人もいたかもしれません。

しかしひとりひとりには完全には当てはまらなくても、判定基準をたくさんにしてより多く、8億人くらいを対象に考えたら、大体じっさいの信用度に近づくと思いませんか?

アリババはそう考えました。そして最高にイケてる考えとして、自分の信用スコアを誰でもスマホで確認できるようにしたのです。

 

 

熱中して信用スコアを上げる中国人

アリババはスコアは誰でも確認できるようにしましたが、その判定方法は公表しませんでした。

中国の人たちは、自分の行動や消費行動に合わせて上がったり下がったりするスコアに一喜一憂して「こうやったら上がる、ああやった方がいい」とみんな熱中しました。

どうやったらお金持ちになれるのか語るユーチューバーのように、動画サイトで“どうやったらスコアが上がるか”教える人も出てきました。

スコアが高いと、レンタカーをするときに保証金を入れなくてよくなったり、ホテルに泊まるときとか借りパクしないだろうと充電器を無料で借りられたり、本当は前払いの携帯電話料金を、“踏み倒さないよね?”と後払いにしてもらえたり、いろんな恩恵が受けられました。

そしてそのうちに、この大流行の芝麻信用が『国民のマナーをよくするのに使えるのではないか』と党幹部の目にとまり、中国政府がバックアップするようになりました。

 

 

マナーをよくするために芝麻信用に目をつけた中国政府

中国の国民が芝麻信用のスコアを上げるために、

自国民が借りたものをちゃんと返して約束を守り、

SNS でお行儀よくして、

他人の評判を気にしてワガママを言わなくなるのです。

 

かねてから旅行先でのマナーの悪さやお互いに我慢できないことでおこる争いに頭を悩ませていた中国政府は、この流行を利用して国民を教育することにしました。

公務員の採用条件に“芝麻信用のスコア600点以上のひと”としたり、海外旅行にいく際のビザ発給を高スコアの人には軽くしたりしたのです。

 

 

加熱する流行とストップをかけた中国政府

国がバックアップするなら信用できるとますます流行は加熱しました。恋愛マッチングアプリで高スコアの人は相手とマッチングしやすくなったり、お見合いのときのアピールポイントとして扱われたり、転職でよりよい条件の所に行けたりするようになったのです。

しかし、いち民間企業のアリババがつける格付けに政府がのっかってしまったら、国家の機能を分割するようなものなので、一時期と比べればアリババと政府の距離は遠くなり、現在では当たり前のインフラとして国民生活に溶け込んでいるようです。

 

 

日本にやってきた信用スコアたち。私たちはどこまで個人情報を渡すべきだろうか。

中国での大成功を見て日本の会社もつぎつぎと芝麻信用のような信用スコアリングサービスを始めています。

「LINE Pay(ラインペイ)」の『LINEスコア』などが有名ですよね。

日本ではまだまだ広まってはいませんが、菅政権に変わってからデジタル庁がたちあがり、日本の社会全体がデジタル化にむけて動きはじめています。

私たちはこれから『便利』の代わりに企業にどれだけ自分の情報をわたすかを決めなければなりません。

これからインターネットサービスを利用するときに個人情報を入力するさいなど、一度ちょっと止まって考えてみるとちょっと面白いです。

 

そう考えると個人情報を打ちこむのをちょっとためらってしまいますが、すでにユーチューブを観てるときなど現在見てる動画やこれまで見てきた動画に近い動画がおすすめされますよね?

すでに私たちは履歴から次のおすすめを選んでもらうテクノロジーを違和感なく利用しているんです。必要以上に怖がることなく自分の考えを探していきましょう。

 

最後にインターネット業界で有名な言葉をご紹介します。

 

「タダで商品を使っているなら、君がその商品だ」

日本のミライ