2020年10月29日

地獄への道は善意で舗装されている〜失敗した政策たち その1

『地獄への道は善意で舗装されている』

〜ヨーロッパのことわざ〜

 

ふりかえって考えてみれば大失敗だった政策だって、それが実行されたということは、そのときにはみんな「それでうまくいくよね」って思っていたはずです。

だってそうじゃなかったら、「やめとこうよ」という声の方が大きくなるはずじゃないですか。

今回の記事は、良かれと思ってやったんだけど、大失敗におわってしまった政策をご紹介します。

 

 

地上の楽園『ナウル共和国』

ナウル共和国はオーストラリアとハワイの間にある小さな国です。国土面積は東京の港区と同じくらいしかありません。小さな島なので、ナウル国民はずっと漁業と農業をやって慎ましく暮らしていました。

しかし1888年にこの島全体がリン鉱石でできていることがわかりました。リン鉱石は肥料の材料として高値で取引される貴重な資源、ナウル国民は自分たちが宝の山の上で生活していたことに気づいたのです。

そして1980年代にはリン鉱石採掘の莫大な収入で、国民1人あたりのGNP(国民総生産)が当時の日本の2倍もあるお金持ち国家になりました。

 

あんまり儲かったのでナウル共和国は、税金も、水道光熱費も、学費も、医療費も無料にしました。

それだけだとお金があまってしまうので、国民の生活費も無料にして、結婚したカップルには国から一軒家をプレゼント。リン鉱石の採掘も辛いので、外国から労働者を呼んでみんな任せてしまいました。

国民は働かなくても生きていけるようになったのです。

 

 

楽園の崩壊〜それでもやっぱり働きたくない!!

しかし資源は採掘すれば減っていくもの。ましてやナウル共和国は小さな国ですからあっという間に取り尽くしてしまいました。あとに残ったのは採掘あとの石灰岩丸出しの荒れ果てた土地だけ。栄養のもとになるリンもお金に変えてしまったので、農業に戻るのも難しそうです。

さらに正直にいうと国民のやる気がありません。リン鉱石の貿易で、30年も働かずにいたのです。国民の肥満率は世界最高の90%!!

もう真面目に働くなんて考えたくありません。さいわいにしてリン鉱石で儲けたお金がたくさんあります。これはもうマネーゲームで儲けるしかないですよね?

 

ハワイにグアムにオーストラリア、リゾート地の不動産を買いまくり、高度経済成長期でイケイケだった日本にもお金を突っ込みました。

しかしみなさん知っての通り、バブルは弾けて株も不動産も価格は下がって、ナウルの資金は泡と消えました。

 

それでもナウルはもう農業と漁業には戻りたくないし、戻れません。

そこで国籍を売ることにしました。いろんな国の国籍を持っていると便利なので、けっこう売れてうまくいっていたのですが、中東のアルカイダというテロ組織のメンバーがナウルのパスポートでアメリカに入国してテロ活動をしていたことが発覚、怒ったアメリカにパスポートを売るのを止められてしまいました。

 

「世界でいちばん安く銀行が設立できる国」というキャッチコピーで、世界一安く銀行を作れるというビジネスもはじめたんですけど、ロシアのマフィアの資金洗浄(犯罪にかかわっているので表の世界で使えないお金を、使えるお金に両替すること)に使われていたことがわかって世界中から叩かれて、泣く泣くとりやめるなど、何をやっても運が悪いのかうまくいきません。

 

南の島なんだから観光に力を入れればいいじゃないか、と思われるかもしれませんが、ナウルの海岸は日本の日本海側のように岩がゴロゴロ、ゴツゴツしていて、とても観光に使えるようなビーチはありません。

 

がんばれ! ナウル共和国

燃料が買えないので電気が止まり、国有の飛行機も差し押さえられ、たくさんあった銀行も完全に破綻。

現在ナウルは最新の採掘技術を使って、これまで地下深くで手が出せなかったリン鉱脈の再採掘計画を進めています。

正直、もう十分苦しんだんだから、そろそろ報われて欲しいです。

ナウル共和国のまとめ

ナウル共和国は、みんなのために良かれと思って税金を免除したり、家をプレゼントしたりしたんですが、それが結果として国民の働く意欲を奪って、国の経営破綻を招いてしまいました。

しかしだからといって国が利益を国民に渡さずに少数の特権階級が独占していたら、それはそれで問題です。

ナウル共和国の失敗の原因は、リン鉱石が産出されて利益が出ているうちに、資源の枯渇した将来のための産業を考えて転換できなかった点にあります。

 

でもうまくいっているときに次の方法を考えて実践していくのってすごく難しいことです。日本も経済成長期にやっておくべきだった政策をいくつもやっていないので現在困っています。

ナウル共和国を笑うことなんてできません。

 

 

菅総理の語った「自助・共助・公助」

菅総理は自民党総裁選の時から自らの政策理念として「自助・共助・公助」を掲げていて、これに対して野党は「まず自助というのは政府の役割を放棄しているに等しい」と批判しています。

「自助・共助・公助」とは、

 

 1.自分で自分の問題を解決しようとがんばること

 2.まわりのみんなや地域で助け合うこと

 3.自分や地域で解決できない場合に国や公的機関をつかうこと

 

です。

 

まず『自助(自分で自分のことをなんとかしようとすること)』すべきというのは、理屈としてはそうなんだけど、『公助』の役割をはたすはずの政府のリーダーが言うセリフじゃないというわけです。

みなさんだって、学校の先生が「毎日べんきょうばっかりしてないで、たまには外で遊びなさい」と言ったり、会社の社長が「仕事ばっかりしてないで、たまには休んで気分転換してきてはどうだい?」とか言ってきたら、

 

「いやいや、まず宿題(ノルマ)へらせよ」

 

って思いますよね。

「おまえが言うなよ」ってやつです。

 

それはそうなんですが、自助をやらずに公助で全部やってしまうと、日本はこの『ナウル共和国』のようになってしまいます。

政府のお金は私たちの払った税金や国債(日本の人たちがこれまで積み上げてきた信用でお金を借りること。発行すればするほど信用は落ちる)なので、リン鉱石と同じように、使うだけだといずれ枯渇してしまいます。

もちろん、生きていく上で全てを「自助」でまかなうことは不可能です。

高齢で働けなくなったり、病気になったり、あるいは介護を受ける必要が出てきたときには「共助」や「公助」は必要です。その「共助」や「公助」の資金源を大きくするためにも、できる人はまずは「自助」からはじめていくべきだと考えます。

菅政権の記事日本のミライ