2020年10月30日

上有政策下有对策(中国のことわざ)〜失敗した政策たち その2

『上に政策あり、下に対策あり』

 

中国のことわざで、国が政策を作ったらみんなその抜け道を探しはじめるという意味です。

わたしたちがちょっと考えて「え? その仕組みおかしくない? もっとこうやったらいいのに…」と解決策を思いつくとき、けっこうな割合で『上有政策下有对策』のことを忘れています。

 

それでは今回は、“その政策が実施されたときに国民のとるリアクション”を考えていなかったために失敗した政策をご紹介いたします。

 

 

インドの毒蛇への対策の失敗

みなさんはコブラというヘビを知っていますか?

ひと噛みで大人の男性を20人殺せるくらいの猛毒をもったヘビです。

「象だって噛み殺してしまう」とインドでは怖がられていました。

 

じっさいに噛まれて死ぬ人も多くて、このことを問題視したインド政府はコブラを捕まえてきた人に懸賞金を払うことにしました。そうすればみんなやっきになってコブラを探して捕まえてくるので、あっという間にコブラはいなくなるだろうと考えたわけです。

 

しかし、なぜだかコブラの数はめちゃくちゃ増えてしまいました。なぜでしょうか?

 

 

ペットになったコブラ

じつはコブラをみんな捕まえてきたら、すぐにお金に変えずにいったん家で飼ってたんですね。

わざわざ危険な野生のコブラを捕まえにいくよりも、家の中で育てて増やした分を役所に持っていった方が安全だし、効率的です。人間は頭がいいですね!

 

みんなこうやってガンガン増やしてドンドン役所に持っていくんですが、野生のコブラの数は全然へりません。

さすがの役所もみんながコブラを養殖していたことに気づいて激怒、コブラの懸賞金を取りやめてしまいます。

すると

「なんだ、もうコブラじゃ儲かんねーのかよ」

とコブラを養殖していた人たちはほかのお金が儲かりそうなことを探しにいってしまって、邪魔になった養殖コブラを外に逃してしまいました。

そんなわけでコブラの数は懸賞金を掛けるまえより増えてしまって、次の年のコブラにかまれて死ぬ人の数は、とんでもないことになったそうです。

この事件から経済学では、

 

問題を解決しようとがんばったんだけど、結果的に問題を悪化させてしまった

 

ようなケースに『コブラ効果』という名前をつけました。

 

 

献血ってなんで無料で血をあげないといけないの?

みなさんみたことありませんか?

献血バスの前を通るとよく、

 

『◯型の血液が不足して困っています! 献血へのご協力をよろしくお願いします!!』

 

という看板や張り紙がしてありますよね。

そんなに困っているならボランティアに頼らないでお金を払って協力してもらえばいいのに…

 

じつは昔はそうしてたんです。でも問題があったのでやめてしまいました。では血液を買い取ることにどんな問題があったのでしょうか?

 

 

『黄色い血』という社会問題

1964年に禁止になるまで、自分の血液をお金で売るのは手っ取り早くお金を稼ぐ、割りのいいアルバイトでした。

血は誰でも持っているものなので、仕事がない人やすぐにお金のほしい人は何度も何度も売血を繰り返して赤血球が足りなくなって、血の色が赤ではなく黄色くなるほど献血をくりかえしました。

しかし黄色くなるまで抜き続けた血液は、輸血しても効果が薄く、逆に肝炎という病気にかかるなどの副作用を起こす危険性まであったのです。

そしてさらに、そういうお金に困った『黄色い血』のような人がやるものとして『献血』自体のイメージも悪くなり、本当にほしい健康な血液を持った人たちが献血するのを嫌がるようになってしまいました。

 

いっけん効率が悪そうなみんなの善意にもとづいた献血の仕組みは、そういった過去の苦い経験を学んで生まれたものなんですね。

 

 

韓国で労働者のためにやったことが裏目に?

 

「時給1万ウォンで人間らしく」

 

というキャッチコピーでおとなり韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領は、最低賃金を昨年に16%、今年さらに11%も引き上げました。これで時給は6470ウォンから7530ウォンに、さらに8350ウォンに上がり、週休手当を加えるとなんと、1万20ウォン(約1000円)になるそうです。

 

日本の最低賃金は各都道府県でちがいますが、いちばん高い東京が時給1013円、日本全国で最低賃金が1000円を超えているのはあとは神奈川県だけ。いちばんひくい沖縄県なんて時給792円です。韓国に負けています。

いますぐ韓国にならって日本も最低賃金を上げてほしいところですが、すぐに上げてしまうのは危険かもしれません。

 

 

最低賃金を上げたら雇用が減った??

韓国の新聞、朝鮮日報によると、韓国の失業者は107万人と過去最大を記録。

2014年には約60万件もあった新しい人の雇用は、今年までに9万7000件まですくなくなってしまいました。

これは最低賃金を上げたことに韓国の社会が、

 

これまで3人雇えていたような会社が人件費を払えずに2人しか雇えなくなったり、

10人雇っていた会社が人件費が上がったために2人解雇したり、

 

という反応をしたことでおこったようです。

そしていま韓国の労働者はこれまで3人でやっていた仕事を一生懸命2人でやるような苦しい労働状況におかれています。

 

最低賃金は上げない方がいいのか。

 

「じゃあ最低賃金は上げない方がいいの?」

 

と思ってしまいますよね。じっさい、日本の知識人の人にもそういうことを言う人がいます。しかし、その考えは合っていますが、間違ってもいます。

 

「どっちだよ!」

 

とツッコまれそうですが、そうなんです。

日本は世界の先進国で考えて最低賃金が低すぎるとずっと昔から言われ続けています。実体経済との関係でほかの国並みの基準を採用したら、日本の適正最低賃金は1300円くらいになります。

上げた方がいいのはまちがいありません。しかし、問題は

 

“いつ”

 

上げるかにあります。

 

失敗したら韓国のように失業率は上がり、時給が上がった分みじかい時間に、よりたくさんの労働量を詰め込まれるでしょう。そして私たちは一つの職だけで食べていけないのでいくつもの仕事を掛け持ちしないといけなくなります。

残念ながら日本の会社もみなさんの賃金を抑えているぶんが懐に入って儲かっているわけではないので、人件費に回せる余裕があるわけではありません。

なので大事なのは『期待』になります。

 

将来日本の経済はよくなるだろうという『期待』

給料が上がるだろうという『期待』

たくさん商品を在庫に入れておいたら飛ぶように売れてたくさん儲かるだろうという『期待』

 

そういった『期待』を日本のみんなが持ったときに、はじめて会社はリスクをとって人をたくさん雇いますし、給料を払います。

韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領は最低賃金を上げたときに韓国国民に『期待』を持ってもらう事に失敗したわけです。世界の経済状況もありますし、中国の台頭や主要産業の不調もありますので、単純に文在寅大統領のそのときの判断が間違っていたとするのは短絡的です。最低賃金を上げることそのものはとてもいいことです。

景気はコマと一緒で回る速度がある程度以上速くなったら、多少の問題があっても弾き飛ばしながら安定する性質があります。

日本は将来に『期待』がもてないのでみんなアクセルを踏めないのです。

なのでこの記事を読んでいるみなさんは明日から『アクセルを踏むフリ』をしていきましょう。

景気のいいことを言って、夢を語っていきましょう!

そうしたらその気分がまわりに伝染していって、本当に景気が良くなる事につながります。

そうしたら最低賃金を安全に上げられるようになります。

 

ただ、アクセルを本当に踏むのには慎重でいましょう。足場がフラフラしているのにアクセルを踏み込みすぎると大きな事故につながります。

 

 

さいごに

いかがでしたでしょうか?

インドのコブラの例にあるように、どんな失敗も最初の動機は誰かの「よかれ」という小さな善意からはじまっていることが多いものです。

その善意を向ける対象に自分が入っていなかったり、善意をまちがった方法で実践したり、欲しがってもいない人に押しつけると、それは『悪法』になってしまいます。

みなさんも国が『悪法』を行わないように注意するのとそのついでに、自分がまわりにそういうことをやっていないか注意してやっていきましょう。わたしも気をつけます。

日本のミライ