2021年1月5日

そもそもなんで大国は小さな島とか占領するの?

この記事は1月7日に書かれているのですが、最近もニュースで中国の不審漁船が尖閣諸島近辺に現れたと報道されていました。

毎年来る回数が増えてきていますよね。

 

日本は「そこは日本の領土でまちがいないんだから領土問題なんてないもん」というスタンスなので、表立って中国の領海侵犯を国際社会に訴えるような思い切ったことはしていませんが、同じように領海侵犯された上に勝手に埋め立てられて人工島を作られたフィリピンは国際法廷に中国を訴えました。

勝手に魚を獲られたインドネシアは拿捕した中国漁船をまとめて爆破するなど、中国の拡張政策は周辺国との緊張を生み出しています。

 

しかしなぜ中国は小さな島をとったり山しかないチベットを支配したりしたがるんでしょうか?

中国に限らずロシアもウクライナにあるクリミア半島というところを併合したりしています。

クリミア半島はリゾート地としては有名ですが、別に石油が出るわけでもありません。

中国もロシアも、世界征服を狙うにはあまりにも地味な侵略です。

世界の反感を買ってまで小さな島を獲得する必要ってあるんでしょうか?

 

実はあるんです!

 

いや、実際あるのかどうかは誰にもわかんないんですけど、やるにはやるだけの理由があります。

その根拠のひとつになっている学問が『地政学』という学問です。

 

「そんなもん知らん」

 

「聞いたこともない」

 

という方も多いでしょう。それもそのはず。実はこの『地政学』は戦前に大流行していたんですが、第二次世界大戦で日本が負けてアメリカに占領されているときに、『地政学』を日本人が学ぶことがアメリカにとって危険だということで、GHQに禁止されてしまったんですね。

今日では国の戦略を決める上でも国際ニュースを読み解く上でも地政学は欠かせないものになっています。

他の国のニュースでは当たり前に地政学を使って国際情勢を解説します。しかし日本では戦後の禁止が今でも響いているのか、あまり一般的とは言えません。

そこで今回はそんな禁じられた学問の地政学について紹介させていただきます。

 

 

地政学とは

地政学とは

地理学+政治学

を略した言葉で、「世界を戦場として見た場合に、その立地条件から考えて、どこから攻めるのが効率がいいのか」という学問です。

それではまずは地政学的に世界地図を見ていきましょう。

 

世界を二つに分けるとしたら…

まず地政学を学ぶ上で知っておきたい言葉が『ランドパワー(大陸国家)』『シーパワー(海洋国家)』です。

ランドパワーとは、ドイツやロシア、中国のように、いくつもの国と国境が地続きで接している国のことです。ランドパワーの国は陸続きで来る侵略者と戦うために、陸軍が強い傾向があります。

シーパワーとは、イギリス、アメリカ、そして日本などのように国境の多くが海に面している国のことを指します。こういった国は海軍が強いです。

地政学はまずこの二つに世界を分けるところから始まります。世界はこのランドパワーとシーパワーが覇権をめぐって争っている戦場なんですね。

この争いの勝利条件については二つの考え方があります。まず一つ目は『ハートランド理論』です。

 

 

『ハートランド理論』とは

ハートランドとは心臓部という意味です。『ハートランド理論』とは、

 

「世界の心臓部を握ってしまえば世界の覇権が握れちゃうよね」

 

という理論です。

では世界の心臓はどこかというと、ユーラシア大陸の中央部。

東西に長いユーラシア大陸は、ちょうど人間が文明を築くのに適した気候の緯度に広がっています。ユーラシア大陸の支配権を確立することが世界の覇権を握ることにつながるわけです。

このハートランドでもっとも立地条件がいいのがロシアです。

ロシアは世界地図を見ればわかるように、背後を北極海に守られています。なのでシーパワーの国が海軍を使ってロシアを攻めようとしても、氷が邪魔で大戦力を送り込めません。なのでロシアは背後を気にすることなくユーラシア大陸を攻めることができます。

 

「ロシアを制するものがユーラシアを制し、ユーラシアを制するものが世界を制する」

 

というわけです。

実際ロシアは歴史上何度も冬の間凍らない港を求めて南下政策をとっています。

 

しかしロシアが簡単に世界征服できるのかというと、実際そんなふうにはなっていません。ロシアの南下政策はリムランドで食い止められることになります。

 

大国の思惑に翻弄される悲しい半島国家

リムとは『周辺』という意味。リムランドとは、北西ヨーロッパから中東、インドシナ半島までの東南アジア、中国大陸、ユーラシア大陸東部に至るユーラシアの沿岸地帯までの地帯のことで、世界の紛争のほとんどはこのリムランドで起こってきました。

 

特に多くが海に面していて内陸とも繋がっている半島地形は海軍や陸軍の投入地点に選ばれやすく、シーパワーとランドパワーの代理戦争の舞台として激戦区になりやすい宿命を負っています。

 

日本の周辺では朝鮮半島がそうです。

日本列島は朝鮮半島を覆う弓なりな地形なので、朝鮮半島を押さえたら、釜山港から大艦隊を東北から九州のどこにでも送り込めるようになってしまいます。

日本が1910年に朝鮮を併合した理由も、ロシアの南下政策の防衛として先手を打って海軍の投入先を押さえるためでした。シーパワー日本がランドパワーロシアの機先を制して封じ込めたわけです。

以上のことを踏まえて考えると、日本が敗戦して韓国が独立したあと朝鮮戦争が起こりましたが、あれは南下して海に出たいランドパワー中国をシーパワーアメリカが押さえた代理戦争だと見ることができます。

ベトナム戦争も中国・ソ連のランドパワーがアメリカとインドシナ半島をめぐってぶつかった代理戦争になります。

これが『ハートランド理論』での国際情勢の見方です。

 

『ワールドシー理論』

『ワールドシー理論』とは『ハートランド理論』と対をなす理論で、

「太平洋と大西洋を支配した国家が世界を制することができる」

と考える理論です。

この二つの海を押さえたなら、世界のどこで軍事行動が始まっても、すぐに大艦隊を送り込んで制圧することができるというわけです。

アメリカが世界中に800もの基地を置くのはこの『ワールドシー理論』に則って世界の覇権国家であり続けるためです。

しかしワールドシーを押さえても十分ではありません。大艦隊を送り込んでも接岸できなければいけません。そこで出てくるのが『マージナルシー』という言葉です。マージナルシーとは沿海のことです。

日本周辺だとオホーツク海、日本海、東シナ海、南シナ海などが『マージナルシー』です。ランドパワー側としては『マージナルシー』さえ実効支配してしまえば艦隊が来ても上陸されることはありません。シーパワー側もランドパワー国家の海洋進出を食い止めることができます。

 

まとめ

・世界はランドパワーとシーパワーに分けられる

・ランドパワーとシーパワーは戦っている

・ランドパワー最強はロシア(北極に背中を守られているので、その分攻めにリソース回せる)

・ロシアは凍らない港が欲しくてたびたび南下する

 

・海を押さえておかないといけないので、ランドパワーが海に出ようとするとシーパワーが邪魔をする

・シーパワー最強はアメリカ

・シーパワーがランドパワーの拡張を押さえるためにはマージナルシーを押さえておく必要がある

 

※アメリカとソビエトが冷戦していたときの理論です。

 

そもそもなんで大国は小さな島とか占領するの?

それではこの記事のタイトルの「なんで大国は小さな島とか占領するの?」の答えなんですけど、もうお分かりですよね。

『マージナルシー』を押さえる必要があるから、沿岸の小さな島はいろんな国が欲しがるわけです。

中国が尖閣諸島や台湾が欲しいのも、他国の領海に勝手に人工島を作ってしまうのも、マージナルシーを押さえて海から来るシーパワーに対抗するためです。

さらに中国は防衛のためにマージナルシーを押さえるという以上にワールドシーを制してアメリカの次の覇権国家になろうという気概が見えます。つまりランドパワー国家とシーパワー国家の両方をやろうとしているわけです。

 

地政学の『シーパワー理論』を考えたアルフレッド・セイヤー・マハンはその理論の中で

 

いかなる国も、シーパワー大国とランドパワー大国を両立することはできない

 

と予言しています。

中国は隣国なので、海洋進出なんて失敗して欲しいのですが、それはそれとして偉大な地政学者の予言を中国が打ち破ることができるのか、これからも中国の拡張主義からは目が離せません。

地政学