2021年7月30日

『夏への扉』を探すフランス~家族のカタチはどうなるのか

『夏への扉』とは1956年に発表された私の一番好きな古典SF小説です。

この小説、とにかく構成が巧い!

特にタイトル回収が綺麗に決まっています。

冒頭、雪がうず高く積もった冬のコネチカット州(アメリカの北部にあるクソ寒い場所)の農家で、主人公の飼っている猫が毎回のように主人公に12か所の出入り口のドアを全部順番に開けるようにせがんでくるという描写から始まります。

主人公はめんどくさいんだけれど、この儀式を終えるまでご機嫌斜めな猫の機嫌を取るために毎回ドアを開けて回るわけです。

猫が毎回この謎の行動を行わせる理由について主人公は、

猫は12枚の扉のうちどれか1枚が夏に通じているに違いないという固い信念を持っているのではないか?

と想像しました。

結局、夏へ通じるドアなんてないんで、全部のドアを開けてもらってその先に雪を確認した猫は、また外に出たくなるまでは屋敷の奥に引っ込んでしまいます。

そしてまたおしっこ我慢できなくなったりして外に出たくなったら、主人公を呼んで1枚1枚ドアを開けさせる巡礼の旅に出るわけです。

この主人公の『うちの猫自慢エピソード』が、色々なSF的出来事を経て、

子猫ですら『夏への扉』を探すことを諦めないのに、人間が『よりよい未来』を模索しないなんて馬鹿げてる。もし失敗しても猫みたいに不貞寝して、また何度でも探し始めればいいじゃないか!!

というメッセージに変わります。

私はこの小説を読んでから、新しい物事にリスクを取って挑戦しては失敗するニュースに自然に注目するようになりました。

・自分にピッタリな靴を作るために足に放射線を当てて、骨の形から調べる(結果:被曝する)

・傘を手に持たなくて良いように改良して、帽子と一体化(結果:かっこ悪すぎてまったく流行らず)

・金持ちが貧乏人をこき使うのが許せないので、国が富を一元管理してみんなに公平に配る(結果:働いても働かなくても給料が変わらないのでみんなさぼるようになって国が崩壊)

・地球温暖化を防ぐために各国や企業に二酸化炭素の排出枠制限を設けて温室効果ガスの削減を目指す(結果:『二酸化炭素を排出していい権利』を先進国が発展途上国から買う謎の市場が爆誕!)

など、私たち人類は夏を目指して沢山のドアを開け続けています。

そして先日、人権先進国フランスが新たなドアを開くことになりました。

問われる家族観、どう考えるのが正解なのか正直分からん

皆さんはお父さんとお母さん、どちらか片方しかいない子供を見て、「…かわいそう」とか思いますか?

私は親が途中で離婚してシングルファーザー状態で過ごしましたが、ときたま言われることがありました。

統計データがあるわけではありませんが、昭和から平成、令和と移り変わるにつれて、「家族の形は人それぞれで、幸不幸はケースバイケース。一概に不幸と決めつけてはいけない」という意見が増えてきているように感じます。

家族の形態は多様でもいい。

結婚してなくても、結婚して子供がいなくてもいいし、同性婚も個人の自由だし、夫婦になったからって同じ姓を名乗らないといけないとかおかしい。

若い人のほとんどはそう思っているでしょうし、私もそう思います。

正直、自民党が夫婦別姓にあんなに強く反対したり、サザエさんみたいな昭和の家族観を押し付けてくる意味が分かりません。

日本の支配者層は古くて頭の固い、憐れむべき老害たちですね。

ところで私たちもまた、年月が流れれば老害と呼ばれるようになります。現在の私たちの持つ先進的で緩い家族観も、未来人から見たら大変に遅れたものに見えること間違いなしです。

そんな中で先日、フランス政府が大変な法律を可決したというニュースが飛び込んできました。

父親はいなくてもOK!政府公認精子バンクで女性がいつでも子供を持てるような社会へ…

7月22日の産経新聞の記事によると、フランスである大きな法改正が行われたそうです。

この改正によってフランスでは近い将来、未婚の女性であっても政府管理の精子バンクから精子を貰って人工授精することで、子供を産むことができるようになります。

フランスは未婚のシングルマザーでも出産育児に対して各種公的支援が充実しているので、つまり女性が子供を産んで育てるプロセスに、パートナーが要らなくなるということを意味しています。

父親母親って、人間社会の運営に必須なんだろうか?

皆さんはこのニュースに抵抗感を覚えますか?

何の抵抗もなく受け入れられますか?

両親からの愛情なんてなくても、栄養を与えて知識を教えれば子供は育つっちゃ育ちます。

個人の自由を最大化していくと、家族なんて作っても作らなくてもいいし、できた子供はみんなの税金で育てればいいわけです。

『少子化問題』というとき、少子化が誰の問題になるかといえば、社会の存続のために頭数が必要なわけだから、国の問題です。だから出産育児に社会=国から補助が出るのは当たり前。

すると生まれた子供に対して責任を持つのは、親ではなく国という理屈になります。

最後に

現在の若い人たちの主流の考え方

結婚してなくても、結婚して子供がいなくてもいいし、同性婚も個人の自由だし、夫婦になったからって同じ姓を名乗らないといけないとかおかしい。

の延長線上にあるのがフランス型社会です。

このフランスの社会実験がうまく行くのか行かないのか、どんな問題が起こるのか、家族形成から切り離された男性はどう振る舞うようになるのか。

果たしてフランスの開いた扉は夏へと通じているのでしょうか?

是非皆さんも注目してみていきましょう。

逆にこのフランスの政府公営精子バンクというやり方に抵抗を覚える人は、古い家族観を守ろうとする人たちのお気持ちが理解できるはずです。

『どの時点の家族観』を正解とするかが異なるだけで、家族というものに『あるべき姿』や、なにがしかの不可侵性を期待しているという点は同じです。

その点に自覚的になれたなら、自民党の頑なさを相対的に俯瞰できます。

日本のミライ